本稿は、技術評論社Software Design誌2000年9月号に寄稿したものをHTML化し、加筆訂正したものです。
BeOS Release 5 Personal Edition (以下R5PE)が 無償で利用できるようになったのを機に、 ノートPCでBeOSを使ってみようとお考えの方も多いと思います。 R5PEでは、インストールが簡単なことや、PCカードサポートの強化など、 ノートPCでの使い勝手がより向上しています。 本稿では、R5PEをノートで利用するための情報を紹介します。
なお、本稿では、ノートPC固有の話題のみをとりあげます。 R5PEのインストール・設定・活用などに関する一般的な情報は、 他のwebページや雑誌記事などを参考にしてください。
今まで、ノートPCでBeOSを利用するにあたって、 最初で最大の難関がインストールでした(CD-ROMドライブ内蔵機は除く)。 PCカード接続のCD-ROMドライブがサポートされていなかったため、 さまざまな変則的な方法をとらざるをえませんでした。
しかし、R5PEはWindows上であたかもWindowsアプリケーションのようにインストールできるため、 CD-ROMドライブやFDDが不要となり、 ノートPCでも何ら問題なくインストールできるようになりました。 無償化と相まって「とりあえず試してみる」ことが可能で、 インストールや動作の可否を調べるうえでも非常に敷居が低くなりました。 インストールの具体的な手順は、デスクトップPCの場合と何ら変わりませんので、 ここでは割愛します。
現在フルパッケージで配布されているのはR5.0.1というリリースです。 当初配布されていたR5.0と比べて、 ドライバが増えたりカーネルの安定性が向上したりしています。 また、現在の最新リリースはR5.0.3で、R5.0.1からの更新モジュールという形で配布されています。 従って、一度R5.0.1をインストールしてから、R5.0.3に更新することになります。 R5.0.3の変更点は、FTPサーバーのセキュリティの改善です。 インターネットに接続しない、あるいはFTPサーバーを動かさない場合は、更新の必要はありません。 なおR5.0.2はPro Editionにのみ存在し、PEにはありません。
R5 Pro Edition (製品版)のインストールについて簡単に触れておきます。
Pro EditionをPCカード接続CD-ROMからインストールする場合は、 従来同様、普通の手順でインストールすることはできません。 この場合は、まずR5PEをインストールし、PCカードを認識させ(後述)、 Installerを起動してCD-ROMからBFSパーティションにインストールするといいでしょう。
R5PEでCD-ROMドライブが使用できない場合でも、 拙作のBeWriteなどを使って他の環境でCD-ROMのイメージファイルを作り、 R5PEのイメージファイル(C:\BeOS\image.be)を置き換えれば、 Pro Editionの起動・インストールが可能です。
ここでは、ノートPCでの利用という観点から見た 主要なデバイスの動作状況を見ていきます(PCカードについては後述)。
Be-INハードウェア互換データベースにも多数の事例が報告されていますので、 参考にしてください。
ノート用のビデオチップでは、NeoMagicをはじめとして、 ATI Rage LT Pro、Trident CyberBlade i7(VIA MVP4チップセットに内蔵) などがサポートされています。 ATI Rage Mobility、S3 Savage、Silicon Motion Lynx、 Trident Cyber 9525DVDなどは未サポートですが、 ATI MobilityとSMI LynxについてはBeBitsからドライバを入手することで動作可能です。 また、ドライバがなくても、 VESA BIOSモードが使えれば1024×768ドット16bpp程度まで表示できます。
なお、一部の小型機で使われている変則的な解像度はサポートされていませんが、 BeBitsのProposeModeを使うと適切な表示ができる可能性があります。
Yamaha DS-XG(YMF724/744)、Yamaha OPL3-SA3(YMF715)、 ESS Solo-1(ES1938)などは標準でサポートされています。 その他のES1878/1879、ESS Maestro-1/2などは BeBitsからドライバを入手することで動作可能です。 NeoMagicのAV一体化チップ(MagicMedia 256AV)のオーディオドライバは開発中です。 ドライバがないチップでも、 Sound Blaster Pro互換モードをサポートするチップであれば、 SBProドライバである程度使える可能性があります。
内蔵モデムはソフトウェアモデム(俗にいうWinmodem)がほとんどですが、 LucentかPCTelのチップであればサポートされているので動作する可能性があります。 Dynabookの"Toshiba Internal V.90 Modem"もLucentのようです。 その他のチップ(Conexantなど)は動作しません。 VAIO 505/C1シリーズの以前の機種ではおおむね内蔵モデムが使えましたが、 現行機種は軒並みConexantになっているので厳しいでしょう。
最近は100base-TXのEthernetを内蔵したノートPCも出てきました。 これらは、デスクトップPCでおなじみの一般的なチップ (Intel 8255xやRealtek RTL8139など)が使われており、 ほとんど問題ありません。 Realtek RTL8139のドライバはR5.0.1に含まれています。
PCカードと並んでノートPCの重要な機能である電源管理については、 BeOSでのサポートの状況はあまり変わっておらず、非常に限定されています。 具体的には、APMによる電源オフが可能なだけで、 サスペンドなどの省電力機能はサポートされていません。 そのため、AC電源のない環境で持ち運んで使い続けるのは困難があります。
現在BeOSで使用できるUSBデバイスは、キーボード・マウス・ハブ、 それに一部のプリンタ・デジカメです。 最近のノートPCでは外づけFDDやCD-ROMがUSBになっていることがありますが、 これらストレージ系デバイスは現時点では使用できませんので注意してください。
BIOS設定で「Plug&Play OS」というような項目がある場合、 これをNoにしないとUSBが動作しないケースが多々あります。
AMD CPU搭載機は、チップセットの関係上、 USBコントローラがOHCIであることが多いですが、 OHCIは未サポートなので、その場合USBは一切使用できません。
R5の目玉の一つにIEEE1394のサポート開始があります。 最近のノートPCではIEEE1394ポートを備えたものが増えていますが、 現状ではBeOS側のOHCIドライバの完成度が十分でないこともあり、 残念ながら動作事例はまだありません。 とくに、VAIOに搭載されているSony CXD3222チップは動きません。 TIのチップを搭載しているものは動く可能性があります。
カーネルデバッガに落ちてしまうケースが多かったのですが、 後にカーネルの更新で改善されました。 また、機種によっては、BeOS標準のAPMサポートを使うと、 電源オフ後しばらくの間マシンの電源が入らなくなるという重大な問題があるので、 拙作のAPMドライバの使用をお勧めします。
オーディオ(YMF715)は動作しないようです。 スプラッシュ画面でリブートしてしまう場合は、 BeOS4Linux.tar.gzに含まれるブートフロッピーイメージを使うと起動できます。
キーボードに癖があるらしく、 キーボードがまったく効かないケースが以前から多かったのですが、 R5でも同様の例が報告されています。 対策としてはUSBキーボードを使うくらいしかありません。 また、LaVie LW450Jで、ATI Mobilityドライバが動作しない例が報告されています。
オーディオ(ESS Solo-1)まわりの動作が不安定になる例が報告されています。
PCカードが認識されません。R4.5では使えていましたので、 今後のバグフィクスでまた使えるようになる可能性もあります。
インストール直後はLCDが正常に映りませんが、 一度外部ディスプレイをつないで800×600に設定すればLCDでも正常に映るとのことです。 マウスの反応が悪い問題は、カーネル設定ファイルでhlt disabledにすることで回避できます。
以前からBeOSが動作しないことが知られています。 チップセットの互換性の問題と思われますが、残念ながら改善の見込みはありません。
R5で使用できるPCカードは以下のものです。
モデム、携帯電話、PIAFSなど
NE2000互換(10base-T)、3Com 3C589、Xircom RealPort RE-10
ATAフラッシュ、各種メモリカードアダプタ、 ATAPI CD-ROMドライブ、zipドライブ、外づけHDDなど
Ethernetカードのうち、3Com/Megahertz、Xircom、TDK、富士通、 RATOCなどの製品は一部を除きNE2000互換ではありません。 その他の安価な製品はおおむねNE2000互換と考えていいでしょう。
ATA/ATAPIカードのサポートはまだ実験的なもので、 製品も多種多様なため、一部動かない製品もあります。
SCSIカード、CardBusカード、多機能(コンボ)カードはサポートされていません。 また、NE2000互換100base-TXカードも動作しない可能性があります。
ATA/ATAPIカードのドライバ(BeではCompactFlashドライバと称している) は標準では含まれていませんので、別途入手・インストールします。 また、初期のR5.0には3C589のドライバも含まれていませんので、 3C589を利用する場合は同様にドライバを入手するか、R5.0.1に更新します。 Xircom RE-10を利用する場合はBeBitsからドライバを入手します。
DevicesのResource UsageでIRQに空きがあることを確認してください。 ATA/ATAPIカードを使う場合は、ドライバがIRQ9を固定的に使うので、 IRQ9を空けておきます。 なお、ATA/ATAPIカードと他のカードの同時使用はできないようです。
PCカードを認識させるには、カードの情報がデータベースに登録されている必要があります。 標準で登録されている主なカードは、D-Link DE-660、 VAIO純正CD-ROM、SanDisk CFアダプタ、3C589などです。 それ以外のカードは自分で登録する必要があります。
登録は、手作業で行うこともできますが、拙作のPCカードウィザードを使うと楽に行えます。 手作業で行う方法については、すでにユーザーの方々がwebページで紹介されています。 どちらも稿末のリンク集に挙げてありますので参考にしてください。
登録が終わったらカードを挿します(CD-ROMドライブなど、 デバイス側に電源がある場合は、電源を入れてから挿します)。 これでカードが認識され、ドライバが割り当てられます。 後は、カードの種類に応じて設定をします。
DialUpNetworkでPPPの設定をします。 前もってSerialConnectのConnectDirectlyでATコマンドの反応を確認するとよいでしょう。
Networkを起動すると、 NE2000 compatible PCMCIAまたは3com 3c589が認識されていますので、 必要な設定をします。
DriveSetupを起動し、PCカードに対応するデバイスをマウントします。
PCカードは、使用中(通信中、マウント中)でなければ、いきなり抜いてかまいません。 ただし、NetworkやDriveSetupなど、 そのカードに関係するアプリが動作している場合は、 終了させてからの方が安全でしょう。
なお、一部のノートPCでは、BeOS起動時にカードが挿さっていても認識しないものがあります。 その場合は、いったん抜いて挿すか、ソフトウェア的にいったん抜いて挿したことにする (UserBootscriptでcardctl ejectとcardctl insertを実行)と認識できます。
インストールが簡単になったR5PEによって、 従来インストールが難しかったノートPCでも気軽にBeOSを動かせるようになりました。 無償でもありますし、今まで難しそうだからと敬遠していた方も、 ぜひ試してみて、結果を掲示板などで報告してください。